厚生労働省が発表した「人口動態統計月報年計(概数)」によると、誤嚥性肺炎が原因による死亡者数は2018年で3万8,462人となっています。
70歳以上の肺炎患者の7割以上は誤嚥性肺炎であり、いかに高齢者に身近な病気であるかわかりますね。
そこで今回は誤嚥性肺炎のリスクを減らして、健康な日々を過ごすために役立つ口腔ケアについてお話しします。
誤嚥性肺炎は、食道から胃へ向かうはずの食べ物や唾液などが気道内に入ってしまうことで引き起こされる肺炎です。
高齢になると喉の筋肉が衰え、食べ物を噛む力や飲み込む力(嚥下機能)が低下し、誤嚥を起こしやすくなります。
誤嚥性肺炎の主な原因は「肺炎球菌」で、その他にもクレプシェラ菌や緑膿菌、MRSA(黄色ブドウ球菌)などがあり、食べ物に含まれる原因菌が気道から肺へ侵入することで発症します。
誤嚥性肺炎を予防するには、「口腔ケア」を続けることが重要です。
口腔ケアには、歯みがきやうがいなどで口内を清潔に保つだけでなく、口内の働きを良くして「嚥下機能」を向上させるためのリハビリも含まれます。
口腔ケアには、お口をきれいにするケア=「器質的口腔ケア」と、お口の機能を高めるケア=「機能的口腔ケア」があります。
器質的口腔ケアは「お口の中をお掃除して清潔に保つ」ためのケアです。
歯ぐきや舌、頬の内側などの汚れにも細菌が多く繁殖しているため、お口の中にある肺炎の原因菌を減らせます。
機能的口腔ケアは「お口の機能を回復させ、維持・向上する」ためのケアです。
食べ物や唾液がうまく飲み込めるようになる他、円滑なコミュニケーションにもつながります。
よく噛み、よく話すことで脳に刺激を送り、気持ちの安定にも良い効果が期待できます。
機能的口腔ケアの代表例が「嚥下体操」と「パタカラ体操」。
深呼吸をして、首を前後左右にゆっくり動かして、肩を上げ下げし、回します。そして、背伸びをして口を大きく開閉したら舌を出し、咳払いをします。
この体操には首や肩周辺の筋肉をストレッチして、体の緊張を緩め動きやすくする効果があります。
「発声練習」も機能的口腔ケアの一つ。「パ」「タ」「カ」「ラ」と発音することで、唇や舌を動かし、唇や舌の動きを目的別にトレーニングします。
食べるとむせたり、うまく飲み込めないといった症状がある方は、嚥下障害の可能性があります。
また、ご家族にご高齢の方がいて歯医者さんへの通院が難しい場合は、訪問歯科診療を受けてみてはいかがでしょうか。
当院では歯科医院への通院が困難な方々のために、ご自宅や施設・病院へ直接訪問して歯科診療を行っています。お気軽にご相談ください。